世界 の 終わり と ハード ボイルド ワンダーランド 解説。 村上春樹「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド」を読んで

『世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド』村上春樹著ー夢読みで僕はこころを取り戻す

世界 の 終わり と ハード ボイルド ワンダーランド 解説

By: 村上春樹に挑戦、2作目は「世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド」です。 セカオワですね(笑) これは「意味がわからない、難解」と言われる村上春樹のイメージを一新させてくれた読みやすくかつ面白い小説と感じました。 「世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド」ってこんな小説 あらすじ~結末 高い壁に囲まれ、心がない住人や一角獣と共に完全な世界で暮らす僕の物語「世界の終り」 事象を暗号化する計算士として生活する私が老科学者から受けた依頼により、組織と記号士を含めた謎に巻き込まれる「ハードボイルド・ワンダーランド」 この2つの世界はどちらも私(僕)の意識であり、老科学者により埋め込まれた特殊な思考回路によるものだった。 私の意識は次第に作られた世界である「世界の終り」に移行していっている。 このまま「世界の終り」で生きるべきか。 脱出方法を見つけた僕と影が取った行動は。 最後に取った選択は「僕だけが生きる」道であった。 「世界の終り」が意味するもの ファンタジーな世界観で構成されている「世界の終り」と、計算士や現実の地名が表記された現実世界風味の「ハードボイルド・ワンダーランド」 2つの思考回路(意識)は、一見すると現実世界と思われる後者がメインの話の印象を受けます。 しかし、私が共感したのは「世界の終り」の方です。 「世界の終り」では、全てのことが決まっている囲まれた完全な世界です。 言うなれば、自分の内向的な意識、作り上げた想像の世界とも置き換えられます。 想像の世界で生きる事はダメな事でしょうか? そんな疑問に対して、この小説はゆるやかな答えを示してくれました。 「世界の終り」の住人たちは既に心も影もない状態ですが、「僕」は心も影も残した状態で生活が始まります。 しかし、この影は引き剥がされ冬を迎えると死んでしまい、「僕」は影のない人間として「世界の終り」で永遠の生活を送ることになります。 「私」の意識が作られた世界に移行していく中、「僕」と影は「世界の終り」からの脱出を試みることを考えます。 想像の世界とは決別する事が正解なのか。 この小説が出した答えは「僕」だけが想像の世界に留まり、影は脱出するという道でした。 現実世界を諦めることは普通ならバッドエンドです。 しかし、何故かこの小説ではバッドエンドのような悲壮感はありません。 自分が作り上げたともいえる「世界の終り」に責任を持ち、「世界の終り」を消滅させるのではなく「世界の終り」を否定もせずに生きていく道がある。 そんなゆるやかな道も悪くはないよ、と暗に言っているように聞こえました。 単純にパラレルワールドを舞台にしたファンタジー小説としても十分楽しめながら、何か考えさせられる魅力的な小説でした。 もしかしたら村上ワールドにはこうやってハマっていくのかもしれませんね。

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世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド

世界 の 終わり と ハード ボイルド ワンダーランド 解説

世界の終りとハードボイルド・ワンダーランドのあらすじ・作品解説 「世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド」は村上春樹による長編小説である。 1985年に新潮社から発行された。 「ハードボイルド・ワンダーランド」「世界の終り」の章が交互に書かれ、物語は同時進行で展開されてゆく。 「ハードボイルド・ワンダーランド」の章では、暗号を取り扱う「私」が自らに仕掛けられた装置の謎を解明する物語である。 老博士に呼び出された私が太った博士の孫娘に研究所まで案内される。 そうして博士や孫娘とやりとりがあり、何者かに襲われ部屋が荒らされた後、太った孫娘から世界が終わることを告げられる。 「世界の終り」の章では壁に囲まれた街が舞台で、記憶を失った「僕」が一角獣の頭骨から夢を読み取る「夢読み」として働きながら街の謎やどうして街ができたのかを解き明かしていこうとする。 本作は文庫化もされており、英語のみならずドイツ語、フランス語、スペイン語など多くの言語に翻訳されて世界中で出版されている。 世界の終りとハードボイルド・ワンダーランドの評価 総合評価 3. 63 3. 63 4件.

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世界の終りとハードボイルドワンダーランドの結末は結局どうなったのか?

世界 の 終わり と ハード ボイルド ワンダーランド 解説

小説家は想像の世界を書くのが仕事です。 だから、想像の世界に生きることの危険性を知っています。 向こう側に行ったら戻って来られないのかも知れないのです。 だからは、いやに限らずほとんどの小説家は、異界に行っても戻ってくる小説を書きます。 はじめからファンタジー世界の小説は除きます。 ファンタジー世界の住人は、彼らにとってそれが現実世界です。 この小説は特異です。 作品の中でも特異な作品です。 主人公は「想像の世界」を受け入れます。 「ここは僕自身の世界なんだ。 壁は僕自身を囲む壁で、川は僕自身の中を流れる川で、煙は僕自身を焼く煙なんだ」 この小説を例えば、「世界の終り」の「影」は意識と身体、「僕」は無意識などと解釈することもできるでしょうし、心理学等を使って細かく分析することも可能でしょう。 でも、あまり意味があるとも思えません。 シンプルに「世界の終り」は「僕」の想像世界、「僕」が現実から逃避した世界だと考えていいと思います。 「僕」自身の想像の世界で、直子と僕は出会います。 しかし、彼女には心がありません。 彼女は僕の想像でしかないからです。 僕も記憶を失っています。 記憶がこの小説のキーワードです。 一角獣の頭骨の意味を知り、直子の記憶を僕はかき集めます。 僕が記憶を取り戻すことによって、彼女は心を取り戻し、僕の記憶の中で彼女は生き続けます。 この小説は特別な作品です。 はじめて(だと思います)が「想像世界」に留まることを肯定した作品だからです。 しかし、その肯定は非常に消極的です。 「想像世界」に留まることを本当に肯定していいのか、作者が非常に迷っているのがわかります。 想像の世界が危険なことを良く知っているからです。 しかし、そのようなぎりぎりの地点でしか生きられない人間が確かに存在するのです。 そのような人間にとってこの小説は福音です。 の他の小説が消えて忘れ去られても、いつの時代でもこの小説を必要とする人たちはいます。 いつまでも残しておかなければいけない小説だと思います。 おそらく、作家の自身が思っているよりも、この小説の意味は重大なものです。 この小説は「直子が自殺をせずに生き続けるためにはどうしたらよかったのか」に対する答えでもあります。 彼女は、想像の世界で生きるのです。 (「僕」の想像の中でという意味ではなく、彼女自身の想像世界の中で彼女とキズキが永遠に生き続けるのです。 )しかし、現実から背を向けて死者との想像の世界に生きることにどんな意味があるのでしょう。 そんな生は無意味だという声もあるかと思われます。 いいえ、そんなことはありません。 その答えは「」の続編とも言われる「」に書かれています。 小説の最後の部分について補足します。 最後に主人公は「世界の終り」に留まり、影は現実世界へ脱出しますが、この選択が、唯一主人公が現実世界で生き残れる選択でした。 仮に主人公が影と一緒に「世界の終り」の外へ脱出すれば、「普通は」現実世界に戻れます。 しかし、この主人公は第一回路へのジャンクションが焼き切れている状態です。 現在の主人公の頭の中は、意識が現実世界の回路に戻るジャンクションが存在しません。 このため、主人公が水のたまりに入っても出口はなく溺れて死にます。 影は現実世界の身体です。 だから、現実世界で肉体が生きている限りは現実世界へ戻れます。 とすると、現実世界ではどうなるのか。 現実世界の「僕」の意識は死に、身体は生きているわけですから、主人公は状態になります。 主人公が状態になってしまうと、いかに博士でも主人公を回復させることはできません。 主人公と影が一緒に「世界の終り」に留まる選択をした場合、衰弱した影は冬を越すことなく死にます。 これは現実世界での肉体の死を示します。 肉体が死んでしまえば、もちろん主人公は現実世界で死にます。 「世界の終わり」で主人公は「永遠」に生き続けるのかもしれませんが、これは博士が解説したとおり死ぬまでの一瞬を無限に分割し続けることによって「永遠」を生きるということにすぎません。 アキレスが永遠に亀を追い抜けない詭弁的世界です。 主人公が「世界の終り」に留まり、影が現実世界に脱出することで、主人公の意識は第三回路の中で生き続けます。 影が現実世界に戻ることによって肉体の衰弱は止まります。 外から見ると主人公は状態に見えるかもしれませんが、脳は死んではいません。 第三回路で生きているのです。 太った娘が彼を冷凍睡眠で保存し、そして将来博士が第一回路に戻ることができるジャンクションを脳に作る方法を発明して、彼に施術すれば主人公は現実世界に戻ることができます。 しかし、この後日談は語られることはないでしょう。 この小説にとって重要なのは、「世界の終り」に主人公が留まることを決断したことであって、この決断の重大さの前には、後日主人公がどうなるかは(重要なことなのですが、比較してしまうと)あまり重要なことではありません。 (お読みいただきありがとうございます。 もし、よろしければ感想などありましたら、コメント欄にコメントしていただけると嬉しいです。 ) sonhakuhu23.

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